医薬品による海洋汚染

皆さんは常時服用している薬はありますか?

何かあればすぐに服用する薬はどうでしょう?

そして以前に処方されて余った薬はどのように処理していますか?

 

ここ数年、マイクロプラスチックによる海洋汚染はかなり話題になっていて、すでにプラゴミ削減に取り組まれていたり、意識したりするようになった方も多いかと思います。

しかし問題はマイクロプラスチックだけではありません。

 

近年は医薬品による海洋汚染・環境汚染も問題になっています。

PPCPs問題です。

 

PPCPsとは、医薬品・動物用医薬品・医薬部外品・化粧品・香料・紫外線吸収体・飼料添加物等(Pharmaceuticals and Personal Care Products の略)のことです。

 

これらの化学物質は下水処理水等を通じて河川や湖沼の水系環境中に流出し、生態系やヒト健康に影響を及ぼすことが懸念されています。

 

1990年代には20程度の論文数でしたが、2016年には100以上の論文が出ています。それだけ研究が活性化されているようです。

 

水道の普及、下水処理技術の向上、洗剤メーカーの努力などにより水系感染症は減少しましたが、近年多くの未規制物質が検出されています。その多くは医薬品や日用品などです。

 

私たちが飲んだ薬が便や尿と一緒にトイレに流され、下水処理を通り抜け、河川に流れて行っています。

(不必要になった医薬品・余った医薬品をトイレや排水溝にそのまま流す方も多いようですよ!驚き!

もしかしたら古くなった化粧水なども排水溝に流している方もいるかもしれません。

マイクロプラスチック同様、焼却処理されたとしても医薬品の成分はそのまま河川に流出することも多いのです。)

 

生物への影響の代表例は、ベンガルハゲワシの急激な個体数の減少です。

インドでは1990年代から減少しはじめ、2000年には95%減少したとの報告があります。

原因は家畜(牛など)に投与された抗炎症剤でした。

死んだ牛を食べたハゲワシは腎臓障害を起こして死ぬことが明らかとなっています。

 

日本での取り組みとしては、厚生労働省・農林水産省では、環境影響の評価について定められていませんが、ガイダンスやガイドラインなどを通知しています。

環境省は一部のPPCPsの環境中濃度の把握を行っており、化学物質の環境リスク初期評価を行っています。

 

京都大学での調査によると、やはり都市部(人口が多い地域)ほど河川中の医薬品類濃度が高いとの結果が出ており、例えばインフルエンザが流行した時期はタミフル濃度が高くなります。 

ちなみにタミフルに関しては、世界の70%が日本で備蓄されているそうです。

 

このような問題への国としての対策はやはり欧米の方が進んでいます。

フィンランド環境研究所では、3年以上を費やして医薬品の消費量と環境中に流出した医薬品の濃度に関するデータを収集し、最も問題のある医薬品化合物を特定しているようです。

Finnish Environment Institute > Actions to reduce pharmaceutical emissions in the Baltic Sea region (syke.fi)

 

薬を過剰摂取しない、トイレや排水溝に流さないという個人努力も必要です。

そのために今後はますます「健康」「予防」に注目しなけらばいけないと思っています。